情報源: 【悲報】Spotify、Macでは15時間/月を超えるとシャッフルもできないようです:海外速報部ログ:オルタナティブ・ブログ
「無料がアタリマエでしょ」みたいなモノ言いだったので、違和感を持った。
いや、このページを見てのことなんですけどね。つい何日か前にサービスが始まったSpotify(スポティファイ)が、規定時間を越えると無料で聞けなくなってしまう、それをさもビックリしたかのように伝える記事。なので、このメディアのFacebookコメントに、こんなふうについ書き込んでしまった。
「タダ、っていうのはそういうことじゃないの?」
それに答えて「無料と有料の違いの説明が少し分かりにくく、無料でもシャッフルはできると報じているメディアがあったのでぬか喜びしてしまった、という話です。」と記事を書いた本人からコメント。
タダだから飛びついたけど、課金のハードル=現実に気付いて“ゲッ”と思った、ということだろう。
コンピュータのソフトウェアをはじめ、音楽、写真、映画・・・何でもタダでじゃんじゃん使える、聞ける、見れる。
無料化=フリーミアムは、インターネットがもたらした“メリット”のひとつだろう。
でも、そろそろ限界じゃないか。そう思うんだ。
良い例が、民放の地上波テレビだ。
スポンサーからの広告収入をアテに無料でテレビコンテンツを提供するという、フリーミアムの先駆けともいえるビジネスモデルで、一時はかなり潤った。
でもスポンサーからの収入が減ってきたとたん、シュリンクが始まった。
スポンサーとは縁が薄いシニア層向けの番組が打ち切られたのをはじめ、楽しいけれど手間やカネがかかるコントや時代劇がなくなった。手間ばっかりかかって視聴率が呼べないドキュメンタリーなども番組表から消えていった。
そうして、テレビから「エンターテインメント」や「カルチャー」が消えていった。
その一方で、確実に視聴率が取れてしかも経費が安い番組ばかり制作されるようになった。結果、どの民放チャンネルも、どの曜日も、ヒナ壇にギャラの安いタレントをずらっと並べた番組や、ヒマなタレントを集めた旅番組が多くなったように。その間はニュースと天気予報、さらに番宣や通販、ステマだ。
いま、テレビは何の価値も意味もない、暇つぶしのメディアへと堕落している。
フリーミアムのひとつの終着点、理想と現実の無残な食い違い。その実態がテレビ画面からあふれている。
ネットのコンテンツだって同じようなものだ。
キュレーションサイトとかオウンドメディアとか、聞こえはいいけど、広告収入をアテにあちこちから情報をパクって並べるだけのサイトが爆発的に増えた。
記事とは名ばかりのテキストの羅列は、クラウドソーシングで素人に一文字0.1円とかで綴らせたコピペの文字列。さらにSEOのためにどのサイトも同じような構成、似たような作りの見出しで飾られている。
ページは出来合いのCMSで作るのでレイアウトも似たり寄ったり。使う画像も著作権無料のサービスから借りてきたことがひと目で分かるような均質な絵ばかり。そして最後には必ず「まとめ」が設けられ、その最初には定型句のように「いかがでしたか」のフレーズ。そう書けって、きっとSEOのマニュアルに載っているに違いない。
金太郎アメのような画一的なコンテンツは、ある意味、芸人を雛壇に並べた番組と同じだ。
テレビ同様、スポンサーからの広告収入だけを目的に作られた、無価値、無意味化した“メディア”の残骸だ。
無料は何も生まない、残さない。それどころか、世の中をどんどんつまらなくしてしている。
書籍はさすがに無料サービスはないが、アマゾンの定額読み放題サービス「キンドル アンリミテッド」の制度設計が独善的すぎて出版社や作家と不毛な軋轢を起こしている。
『アマゾン、「読みたい放題」でやりたい放題? 「全削除」され講談社は抗議』
『アマゾン「キンドル アンリミテッド」サービスにおける講談社作品の配信停止につきまして』
作家の佐藤秀峰さんもアマゾンに対して賠償を求めていることを公表した
音楽もSpotifyのような無料サービスがこのまま一般化していったら、無料システムに載りやすいイメージや長さの楽曲ばかり大量生産されるようになるんじゃないか。テレビ局が雛壇番組ばかりになったように。
もういちど書くが、無料は何も生まない。
アマゾンやSpotifyのようなプラットフォーム提供サイドに、一時的な利潤をもたらすだけだ。
ユーザーは無料化により、一瞬、“豊か”になった気分が味わえる。だがそれは錯覚だ。
無料は麻薬。豊かになった錯覚や幻惑を与える麻薬だ。しかも冒頭の記者のような中毒を引き起こさせる。そして覚せい剤が人間を廃人にしてしまうように、いずれは僕らの感性を麻痺させ、生活を無味乾燥に、ズタズタにしてしまう。
何度も書く。無料は何も生まない。
かえって世の中をつまらなくするだけだ。
価値があるモノにはお金を払う。
僕らがいままでしてきたことを思いだした方がいいんじゃないか。
スポンサーに頼らない「有料放送」のNHKが、スポンサーに縛られずに楽しくためになる番組をのびのびと作り、放送してくれているじゃないか。
お金を払おう。
きちんとしたコンテンツや楽曲を提供してくれる制作者には、きちんと対価を支払うべきだ。
それが、僕らの身の回りに本当のエンターテインメントやカルチャーをもういちど取り戻すための、第一歩だ。
と言いながらアフィリエイトは貼るわけですよ(笑)
このフリーミアムの本、僕も読みました。