ライターの勝手Wiki:「いかがでしたか」 自称キュレーション/まとめサイトのクソフレーズ

「いかがでしたか」

キュレーション/まとめサイトなどと自称するページの記事で多用されたフレーズ。
記事の末尾、「まとめ」の項目で使われる。

(使用例)
■キュレーションサイトについて 記事の末尾、まとめの冒頭によく使われる。

いかがでしたか。
キュレーションサイトとひとくちにいっても、ライターがオリジナルの文章を起こして有益な情報を提供している優良なサイトから、他サイトからテキストや画像をパクり、ニセ情報を垂れ流している低品質で信用できないサイトまでさまざまです。
読むときは、その記事の内容や信憑性に十分に注意したいものですね。

[ 主な目的 ]
キュレーション等の記事では、その末尾に「まとめ」の項目を設置することがほぼデフォルトとなっている。なぜか? Googleが読者への有益な情報には「まとめ」があるべきと考えいる、とSEO業者が判断したことが大きな理由となっている。つまりSEO対策に必要なこととして「まとめ」の項目を設置することがSEO業者から強く推奨されている。同様の要素に、記事冒頭に内容のインデックスを置くことなどもある。キュレーションの記事作成用のプログラム(CMS)にそれら要素をあらかじめ実装している。

自称キュレーション/まとめサイトはグーグルのアドセンス広告料による収益をビジネスの基盤としており、アクセス数は収益に直結する。そのためSEO対策は最優先の課題となり、したがって「まとめ」を記事末尾に置くことが標準となった。

[ 使用の実際 ]
記事作成はコストダウンを目的にランサーズやクラウドワークスなどのクラウドソーシングにより行われていた。作成に従事する自称ライターは、経験やスキルが無く、また記事単価が1文字0.5円程度と異様に安いため、おもに他サイトからのコピー&ペーストにより記事と呼ばれるテキストの羅列が乱造されることとなった。

こうした作成過程の中で「まとめ」項目を設置する際の接続詞的なフレーズとして多用されたのが「いかがですか」である。多量のテキストを短時間で自称キュレーション運営サイドが求めるSEO対策フォーマットにあてはめるためのフレーズとして多用された。つまり、「いかがですか」は「まとめ」項目の書き出しに便利な言葉だったわけである。
また経験の無い自称ライターが他ページの記事を参考とした際、「まとめ」のデフォルト・フレーズとして誤認し盲目的に使用してしまった可能性も考えられる。

[ グーグルの対応 ]
2017年2月3日、グーグルは検索アルゴリズムのアップデートを発表した。

Google ウェブマスター向け公式ブログ
『日本語検索の品質向上にむけて』

(内容抜粋)
今回のアップデートにより、ユーザーに有用で信頼できる情報を提供することよりも、検索結果のより上位に自ページを表示させることに主眼を置く、品質の低いサイトの順位が下がります。その結果、オリジナルで有用なコンテンツを持つ高品質なサイトが、より上位に表示されるようになります。

DeNA 「ウェルク」問題に端を発し、さらに今回のグーグルのアップデートにより、自称キュレーション/まとめサイトはそのページビューとともに存在価値を大幅に下げると容易に予想される。従って、この「いかがでしたか」のフレーズも出現率も大幅に低下すると見込まれる。

ウェルクの「監修」は進まないと思う理由、医療コンテンツの制作実体験から

2016年11月24日に、公開されている記事について、医師や薬剤師などの専門家に対し、医学的知見からの監修の依頼を開始いたしました。

【お知らせ】「専門家による記事確認」および「記事内容に関する通報フォームの設置」について

いま大炎上中のウェルクですが、上のリリースで言うとおりには進まないだろうな。医療関係のコンテンツ作成の経験から直観的にそう思いましたね。その理由を次に列挙します。

医師は「エビデンス」を大前提とするので

ここで言うエビデンスは、例えば医学の教科書に載っているような知識や治療法や、医師の学会の統一見解とか、承認されている学術論文など。それらの情報をもとに医師は診療を行うわけです。インタビューなどでの発言や依頼原稿を作成する場合でも同じ。
これまで何度も医師のインタビュー取材をしているけど、医師は必ずテーマに関する論文や資料を持ってきていて、それを確認しながら話します。取材後、原稿をチェックしてもらうと関連する学術論文とかも改めて確認して「やっぱりこう書いて欲しい」と指示がきたり、微妙な言い回しも含めて「一言一句この通りにしてほしい」と言われたりすることもよくあること。
なので、“と言われています”“ということをよく聞きます”なんて責任逃れの伝聞調が多いウェルクの記事を医師が読んだら、「そのエビデンス持ってきて」「無いなら書き替えて」っていうことになりますね。きっと。

「監修」って、実は凄く重い作業って知ってた?

監修という作業は、実績あるプロが責任持って「大丈夫」ってハンコを押すということ。監修者の名前が出るし、無責任なことはできない。本人への取材原稿でさえ医師はあれだけ神経を使うのに、素人がネットからパクって作った文章なんかプロの医師がハンコ押すはずがない。DeNAのリリースには簡単に書いてあるけど、実際やってみると大変だよ。

注目されやすい病気や治療法ほど、監修できない可能性大

がんの新しい治療法みたいに注目されやすい情報はアクセスを稼ぎやすいので、ウェルクにたくさん掲載されていると思う。でもそういう情報ほどエビデンスが不足しており、はっきり書けないことが多い。一方でコレという医師がいると、そうじゃないと反論する医師も出てくる。監修する医師にもよほどの知見がないとできない。なので、監修という作業自体、手を付けられない可能性が大いにある。

監修できる医師を揃えられないでしょ

何でもウェルクには1000単位で記事が上がっているそう。テーマとなっている病気は治療法などもかなり細分化され多岐にわたっていることが予想されます。監修ができるほど実力ある医師になると、自分の専門分野以外は絶対に口をはさまないから、極端な話、ウェルクで扱っている病気の数だけ監修する医師が必要になってくる。
じゃ、ある程度幅広い知識を持っている権威を連れてくればいいんじゃない、というアイデアも出てきそうだけど、そんな人は一部の大学教授レベル。そういう人は普通忙しいし、学会やらの関係とかもあっておいそれと外に出てきたりはしない。Webのエセ情報サイトなんかでは絶対に動かない。

プロが試しに“監修”に近い作業をしたらものすごい時間がかかった、っていう記事が載ってましたね。仮に記事1本の監修に2万円払ったとして、1,000記事だと2千万!?
ファッションやコスメなどでやってきた、キュレーションという名のパクリ行為を医療分野に“ヨコ展開”しただけなのだろうけど、やり過ぎちゃったよね。DeNA自体のブランドイメージの毀損も含めると、ダメージは大きそうだ。

※2016/11/29現在、ウェルクのサイトは問題となりそうな医療関係の記事が一切閲覧できない状況になっています。ただ、Googleで「だるい」とか検索すると相変わらずの状況ですが。

※2016/11/30追記、ウェルクはついに全面閉鎖になりました。昨日の夜のことでした。
http://toyokeizai.net/articles/-/147045

■ウェルク問題はこの記事を読むとよく分かる(と思う)
DeNAがやってるウェルク(Welq)っていうのが企業としてやってはいけない一線を完全に越えてる件(第1回)
【告発も追記】やってはいけない一線を越えたDeNAのウェルク(Welq)をとりあえず直ちに閉鎖すべき理由(シリーズ第2回)

そもそも「キュレーション」って、れっきとした能力だったはず。それが今回の騒動で「=パクリ」という認識が広がってしまった気がする。

「無料」は何も生まない。それどころか、世の中をどんどんつまらなくしている。

情報源: 【悲報】Spotify、Macでは15時間/月を超えるとシャッフルもできないようです:海外速報部ログ:オルタナティブ・ブログ

「無料がアタリマエでしょ」みたいなモノ言いだったので、違和感を持った。
いや、このページを見てのことなんですけどね。つい何日か前にサービスが始まったSpotify(スポティファイ)が、規定時間を越えると無料で聞けなくなってしまう、それをさもビックリしたかのように伝える記事。なので、このメディアのFacebookコメントに、こんなふうについ書き込んでしまった。

「タダ、っていうのはそういうことじゃないの?」

それに答えて「無料と有料の違いの説明が少し分かりにくく、無料でもシャッフルはできると報じているメディアがあったのでぬか喜びしてしまった、という話です。」と記事を書いた本人からコメント。
タダだから飛びついたけど、課金のハードル=現実に気付いて“ゲッ”と思った、ということだろう。

コンピュータのソフトウェアをはじめ、音楽、写真、映画・・・何でもタダでじゃんじゃん使える、聞ける、見れる。
無料化=フリーミアムは、インターネットがもたらした“メリット”のひとつだろう。

でも、そろそろ限界じゃないか。そう思うんだ。

良い例が、民放の地上波テレビだ。
スポンサーからの広告収入をアテに無料でテレビコンテンツを提供するという、フリーミアムの先駆けともいえるビジネスモデルで、一時はかなり潤った。

でもスポンサーからの収入が減ってきたとたん、シュリンクが始まった。
スポンサーとは縁が薄いシニア層向けの番組が打ち切られたのをはじめ、楽しいけれど手間やカネがかかるコントや時代劇がなくなった。手間ばっかりかかって視聴率が呼べないドキュメンタリーなども番組表から消えていった。
そうして、テレビから「エンターテインメント」や「カルチャー」が消えていった。

その一方で、確実に視聴率が取れてしかも経費が安い番組ばかり制作されるようになった。結果、どの民放チャンネルも、どの曜日も、ヒナ壇にギャラの安いタレントをずらっと並べた番組や、ヒマなタレントを集めた旅番組が多くなったように。その間はニュースと天気予報、さらに番宣や通販、ステマだ。
いま、テレビは何の価値も意味もない、暇つぶしのメディアへと堕落している。

フリーミアムのひとつの終着点、理想と現実の無残な食い違い。その実態がテレビ画面からあふれている。

ネットのコンテンツだって同じようなものだ。
キュレーションサイトとかオウンドメディアとか、聞こえはいいけど、広告収入をアテにあちこちから情報をパクって並べるだけのサイトが爆発的に増えた。

記事とは名ばかりのテキストの羅列は、クラウドソーシングで素人に一文字0.1円とかで綴らせたコピペの文字列。さらにSEOのためにどのサイトも同じような構成、似たような作りの見出しで飾られている。

ページは出来合いのCMSで作るのでレイアウトも似たり寄ったり。使う画像も著作権無料のサービスから借りてきたことがひと目で分かるような均質な絵ばかり。そして最後には必ず「まとめ」が設けられ、その最初には定型句のように「いかがでしたか」のフレーズ。そう書けって、きっとSEOのマニュアルに載っているに違いない。

金太郎アメのような画一的なコンテンツは、ある意味、芸人を雛壇に並べた番組と同じだ。
テレビ同様、スポンサーからの広告収入だけを目的に作られた、無価値、無意味化した“メディア”の残骸だ。

無料は何も生まない、残さない。それどころか、世の中をどんどんつまらなくしてしている。

書籍はさすがに無料サービスはないが、アマゾンの定額読み放題サービス「キンドル アンリミテッド」の制度設計が独善的すぎて出版社や作家と不毛な軋轢を起こしている。
『アマゾン、「読みたい放題」でやりたい放題? 「全削除」され講談社は抗議』
『アマゾン「キンドル アンリミテッド」サービスにおける講談社作品の配信停止につきまして』
作家の佐藤秀峰さんもアマゾンに対して賠償を求めていることを公表した

音楽もSpotifyのような無料サービスがこのまま一般化していったら、無料システムに載りやすいイメージや長さの楽曲ばかり大量生産されるようになるんじゃないか。テレビ局が雛壇番組ばかりになったように。

もういちど書くが、無料は何も生まない。
アマゾンやSpotifyのようなプラットフォーム提供サイドに、一時的な利潤をもたらすだけだ。

ユーザーは無料化により、一瞬、“豊か”になった気分が味わえる。だがそれは錯覚だ。
無料は麻薬。豊かになった錯覚や幻惑を与える麻薬だ。しかも冒頭の記者のような中毒を引き起こさせる。そして覚せい剤が人間を廃人にしてしまうように、いずれは僕らの感性を麻痺させ、生活を無味乾燥に、ズタズタにしてしまう。

何度も書く。無料は何も生まない。
かえって世の中をつまらなくするだけだ。

価値があるモノにはお金を払う。
僕らがいままでしてきたことを思いだした方がいいんじゃないか。
スポンサーに頼らない「有料放送」のNHKが、スポンサーに縛られずに楽しくためになる番組をのびのびと作り、放送してくれているじゃないか。

お金を払おう。
きちんとしたコンテンツや楽曲を提供してくれる制作者には、きちんと対価を支払うべきだ。
それが、僕らの身の回りに本当のエンターテインメントやカルチャーをもういちど取り戻すための、第一歩だ。

と言いながらアフィリエイトは貼るわけですよ(笑)
このフリーミアムの本、僕も読みました。