「働き方革命」ってなんだ?

コピーライター歴20年の私が、クラウドワークスの決算発表に突っ込んでみた

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「制作」と「製作」の違い、分かります? 

「制作」は、映画などの創作物を作ること。僕ら広告業界も、こちらの「セイサク」だと、入りたての頃に先輩から教わった。で、「製作」は道具を使ってモノづくりをすること。世の中、そのへんがごちゃごちゃにされているけれど。クラウドワークスもそんな感じがウェブサイトで見受けられる。広告業界でも、かなり混同されてるけどね(笑) 

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平均月収32万円は凄い

そのクラウドワークスが少し前に決算発表をして、ブログなどで話題になった。
僕は広告系の制作者なので、基本、広告やウェブサイト制作の視点になるけど。なので、エンジニア系はあまり突っ込めない。 

平均月収32万円は凄いんじゃないかな、と資料を見て素直に思った。ただ、それは月収20万以上の人の月収という但し書きがつくけど。そういう人は全部で111人。ワーカーさんは全部で80万人というから、稼いでいるのはほんのわずか。割合とか計算するのも面倒なので誰か計算して(笑)。

ちなみに、収入20万円越えのワーカーさんに対する支払総額は38,209,530円、2割のマージンを取ったとして売上げ47,761,913円。差し引きの利益は約9,552,383円、ざっくり1千万円。この期の収益総額が2億8千500万円となっているから、20万円越えのワーカーさんが同社の収益に占める割合は3%ちょっとでしかない。 収益のこういう構造は、楽天の出店者(社)も似たようなものなんだろうと思う。

クラウドワークスの募集案件を見ても、エンジニアの開発案件は50万円とか100万円の案件があるけど、ライティングやデザインの仕事は単価が安い。数百円単位なんていうのもザラ。制作の仕事で多くの金額を稼ぐのは、かなり大変そうだ。 

プロジェクトマネジメントは?

クラウドワークスではもうひとつの“柱”を用意している。上記で説明したのは中小企業向けのプラットフォームと呼ばれるカテゴリ。地方の店舗や小さい企業の細々とした案件を、ワーカーと直接やり取りするものだ。

 それに対して、大きな企業の少し大きな案件をクラウドワークスのスタッフがマネジメントする、大企業向けのプロジェクトマネジメントも用意されている。小さな案件はウェブサービスで数を稼ぎ、大企業向けの案件をは自社で直接さばいて利益を上積みする戦略だ。 

ただこれは、前者の中小企業向けのプラットフォームしか残らない予感がしている。 

昔やったことがある、クリエイターのマッチング

実をいうと僕は、クラウドワークスと同じようなビジネスモデルを手伝ったことがあって。当時、定着し始めたネットを使って、地方のクリエイターをネットワークしてクライアント側のニーズとマッチングさせようとしたわけ。

ただ、ネット上での募集は“自称”クリエイターが多くて、スキルに不安があるし、実際に発注しても納期に間に合わないことも多々あり。修正をお願いしたら“バックレ”られてしまったり。

結局、どの案件も気心の知れたスタッフとリアルに打ち合わせをしながら進める普通の制作ビジネスに落ち着いていった、という経過がある。
今もクリエイター系のマッチングサイトがあるけど、案件ベースのマッチングは限定的。基本はウェブのコーダーや版下作業などの人材派遣がメインになってるし、実際にそのサービスを利用している制作会社も多い。 

何が「革命」なんだろう? 

クラウドワークスを使ってデザインやプログラミングでせっせと働いて、月収20万程度の収入を得る人は、これからも増えていくんだろう。子育てや介護など、何らかの事情で自宅で暮らさざるを得なくなった元デザイナーや元エンジニアという人がいると思うけど、そういった人たちが収入を得る新しい選択肢が増えたと思う。 

クライアントにとっても、例えば地方の小さいショップが開店するときに、ロゴマークなどのデザインもいっしょに店舗デザイナーに任せて、「あんまり気に入ってないんですよ」なんてオーナーさんの声をよく聞いたたけれど、そんなときの解決策としてクラウドワークスの仕組みは有効だと思う。納得のいくデザインがリーズナブルなコストで得られて、その結果、もっと納得いく開店ができて、オーナーさんもきっと満足でしょう。 

せっかくの“うまみ”が・・・

もうひとつの柱である、プロジェクトのマネジメントの方は? というと、たぶんクラウドワークスはシステム会社だと思うので、制作に関する知識や経験が必要とされるプロジェクトマネジメントが、はたしてうまく回せるのだろうか、という心配がある(僕の勝手な心配だけどw)。

だからといってその部分を外注したら、利益が薄くなって、せっかくの“うまみ”がなくなってしまうんですけどね。以前、僕が手伝った会社は基本的に制作会社だったから問題なかったけど。 

制作の分野も2極化が進む?

流通で「中抜き」が横行し、問屋抜き、EC販売が当たり前になったように、制作の世界でも同様となりそうな予感はしている。ただそれは、クライアントも制作者もビジネス規模の小さい、コストコンシャスな領域に限定される。大きなクライアントや制作物では、コストも大事だけれど、クオリティやスケジュールを重視するから、やはりコントロールしやすい相手:大きな代理店や実績のある制作会社に出す、という流れはきっと変わらない。 

ただし、「中抜き」によって中小の代理店や制作会社は苦境に立たされることが多くなるんじゃないか。それによって、大きな案件を扱う大きな代理店や制作会社と、クラウドワークスのワーカーさんのような個人ベースの制作者との2極化がきっと進むはず。 

さて、僕はどっちにいったらいいんでしょう(笑)

日本人とコンセプト:広告はコンセプトありき。

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まえと、そのまえからの続き。
ちなみに、広告制作の世界では、基本、コンセプチュアルなやり方で進められます。
誰をターゲットに、どんな訴求ポイントで制作するか。ディレクターが規定したコンセプトに基づき、デザイナーがラフスケッチを描き、コピーライターがキャッチフレーズを書きます。それをアートディレクターやコピーディレクターが実際の広告案として仕立てていきます。
訴求ポイントをくっきり伝えるには、例えば写真撮影が良いのか、イラスト表現なのか。キャッチフレーズのものの言い方、フォントやレイアウトはどうするか。すべて、当初規定したコンセプトを外さないように作業が進められます。
写真撮る時間がないから、そこはイラストで。なんていう選択肢はありません。写真がベストと判断されたら、現地スタッフを調達するなど、いろんな方法を使って遂行されます。ドラえもんのポケットから便利ツールを出してくる、みたいな。ま、広告キャンペーンの規模や予算にもよりますけど(笑)。
コンセプトを具現化した表現プランができなかったら、例えプレゼン直前でも、徹夜してでも表現を探し直して作ります。
ほら、こんなところはジョブズのやり方と同じ。なので、彼のやり方は僕は理解できます。共感もできる。
で、そうやって作った広告プランを、得意先の会社でどのように決定するか。
全社規模、事業部規模の大きなキャンペーンだと、クライアントの担当や幹部で話し合って提出した案をそのままお買い上げ、ということが多いかな。
だけど、部門ごとの純広告とか、それほど規模が大きくなくなると、まず多数決。だいたいの会社が。イントラに案を上げて、みんなで投票したりして。
で、「A案のこの部分と、B案のこの部分を合わせた修正案が欲しい」という返答もしょっちゅう。
よく聞くと「A案は部長推し、だけどスタッフはB案が良い、って言ったので」などと、ここでも合議制の論理。
こうやって、訴求ポイントやターゲットなど、コンセプトがゴチャゴチャにされた、わけの分からない広告が世の中に出ていくわけです(苦笑)。
なんだかわけ分かんないなー、なんて思える広告は、こんな風にして送り出されたものかもしれないです。たぶん。
※画像はhttp://free-images.gatag.net/tag/graphics より

日本人とコンセプト:やったことないので、分からない。その例?

まえの続き。
コンセプチュアルなやり方は、やったことがない人にとっては理解できない。その実例として。
昔、カーナビの開発関連の作業でのこと。
発注側の開発部長はこう言いました。
・検索のインデックスを作ってほしい
・地図データが揃ってないエリアがあるけど、そこはブランクでかまわない
・データが揃い次第、追加していく
それに対して受注側の開発者は、
・インデックスが追加されることもあるので、データが揃わないと着手できない
との一点張り。打ち合わせは平行線のまま。ま、開発ツールの制約とかもあるので、ぴったり当てはまる例とはいえないかもしれないけど。
ただ、この直後ぐらいから「オブジェクト指向」というコンセプチュアルっぽい開発手法も出てきましたが。
部長側は、コンセプチュアルな手法でやってほしい、といってるのに対し、
開発側は、積み上げる方法でしかできない、ということかと。
川上から降りるか、川下から上がっていくか。
どっちにしろ、同じ場所に辿り着こうとしているんですけどね。
ただ、合議制の場合は「みんなの意見」という不確定要素が往々にしてあるので、
「着いてみたら別の場所だった」ということがあるような。
そんな例は、また次のエントリで。
※画像はhttp://www.flickr.com/photos/e3000/8498378262/in/photostream/より

日本人とコンセプト:やったことないので、分からない。

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スティーブジョブズのようなアイデアと実行力で、現状の打破を!なんて。
少し前、スティーブジョブズ待望論が日本で起こってました。

目標設定、
実現へのアプローチ、
決断力、
そして実行力、などなど、
これからのモノづくりが見習うべき要素がいっぱい! みたいなことを言う評論家の先生とかをよく見たんですけどね。一時期。
でもね、無理ですよ。日本の企業で。
起業したばかりとか中小企業だったらいざ知らず。
ジョブズは、コンセプチュアルなやり方だった。
最初に目標、到達点ありき。しかも、とても具体的に緻密にプランニングされていた、と聞きます。Appleの社員は、言ってみればジョブズのプランを実現するために働いた、ともいえる。
で、一切の妥協を排して目標の実現をめざした。それができない場合は、例え発表間近であってもやり直させたり。iPhoneも、そういう製造手法でできた商品。
でも、そんなやり方、日本人は教わったことがない。体験したことがない。だから、できない。と思う。
だって、
学校では、学級委員会で多数決。
会社に入ったら、上司を含めて合議制。
みんなで意見を出し合って、みんなで納得しないと進まない手法。
ちょっとでも強引な人がいると、「ワンマン」とか言っちゃって排除しようとしてません?
最近は「リーダー育成」を掲げる学校もあるようだけど。どんなやり方やってるんでしょう?
こうした流れがあるせいか、日本の会社はおおむね合議制で仕事を進めていきます。
で、たまに上長や社長から「ツルの一声」があったり、それが多いと「ワンマン」と下の社員から烙印を押されたり。最近は「ブラック」という称号?も。
そんな職場も長く続けていると、「しきたり」「慣行」ができて、それらをもとに「場の空気」が醸成されて。それに染まらないと、「変わり者」とか言われたり。
そういう中に、スティーブジョブズが来て、彼の流儀で仕事を進めたって・・・結果は、火を見るより明らかなんじゃないですか。
※画像はhttp://ja.wikipedia.org/wiki/スティーブ・ジョブズ より