僕の311、渋谷駅、帰宅難民、iPhone、そしてSNS

今日は311、東日本大震災の日。

あのとき僕は渋谷にいた。
西口のバスターミナル、渋谷中央街を背に、JR渋谷駅に向かって立っていた。

並びはじめた当初はバスが来ていたが、徐々に新しいバスが来なくなっていた

電車は動いていない。渋谷駅にも、左側に見える地下鉄銀座線の渋谷駅にも電車の往来は見えない。
残る公共の交通手段はバスだけだ。僕が立っている前のバス停から自宅近くまでバスが運行しているはずだった。僕の前には数人しかおらず、次にバスが来れば確実に乗車できる。でも1時間ほど前に満員の乗客を乗せたバスが出たきり、次のバスは来る気配がなかった。

後から知ったが、このとき東京周辺の道路は上下線共に麻痺していてぴくりとも動いていなかったそうだ。
3月の寒空の下、すでに2時間くらいは並んでいただろうか。

そのとき、ちょっとした異変が目に映った。
目の前のJR渋谷駅の駅舎から京王井の頭線の入口に向けて走る人がいたのだ。それを追うように数人、パラパラと続く。人の数が次第に増えていく。

目を凝らして見ると、みんな若い。20〜30代くらい。
僕はピンと来てすぐにその人の流れに加わった。バスの順番も気になったが、なに、もう1時間以上も待っても来ないのだ。どうせギャンブルだったら、目の前の新しい流れに賭けてみようと思った。

渋谷駅の帰宅難民の様子。この目線の向こうを、パラパラと走る人が見えてきたのだ。

ピンと来たのは、走ってる人が皆若かったこと。それもTwitterのようなSNSをやっていそうな風体だったからだ。
ちょうどiPhoneの3Gが出始め。スマホ時代の幕開けのときだった。僕も機種変して持っていた。ここにある写真もそのiPhone 3Gで撮ったものだ。

それにともなってTwitterをはじめSNSが流行りはじめていた。mixi、なんてモノもあったな。
目の前で走っている若い人の流れは、そんなSNSで井の頭線の運転再開情報をキャッチした人が改札を目指しているのだと直感した。

はたして直感は当たり、井の頭線の運転再開後、2番めの列車に乗り込むことができ、その後はスムーズに自宅に帰り着くことができた。やれやれ。

311、あの日は自然災害の脅威とともに、SNSの威力や便利さを痛感した日でもあった。
たぶん、運転再開の情報を何らかのかたちで知った人が、それをSNSで発信、リプライやリツイートなどで一気に拡散し、それを知った人が井の頭線の改札に走ったのだと思う。
ニュースサイトは当時もあったが、あれほど正確でリアルタイムな情報提供はされていなかった。そのおかげで僕も帰宅難民にならずに家に帰ることができた。まさにSNSさまさま。
ぼくもせっかくiPhoneを持っていたのだから、やっていれば良かった。というのは後の祭り。

時は過ぎて去年、2016年に熊本の震災があった。
ツイッターやフェイスブックで避難や避難所の情報、支援物資のやり取りなどが効率的に行われた一方で、
動物園のライオンが逃げたなどというフェイク情報も多く流され、災害時の混乱に輪をかけた。ライオンのフェイク情報は、その後、発信元の男が逮捕されている。

2011年の311の時にはまだ普及しはじめで無条件に信じることができたSNSの情報も、
現在は爛熟し信憑性が大きく揺らぐようになった。

わずか5年の間に、SNSもその内容や質がずいぶん変わった。
価値ある情報の宝庫だったものが、とんでもないニセモノもたくさん混じるようになった。まさに玉石混淆。
ニセモノをつかまされたり、それに踊らされないように、情報リテラシーが必須になった。やれやれ、面倒くさいことだが。

通信の普及とその質の変化を、はからずも地震を通して実感した、ともいえそう。時代の変化、といえばそれまでだが。
そんなことを今日、311で思い出していた。

これはうちにももちろんある。

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