売らない、というセールス。

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「このまま様子見てもいいんじゃないですか」
シャキッと、髪をポマードで整えた初老の店員が僕の目を見ながら言います。分け目からの髪の流れに、このあいだ亡くなった菅原文太さんを思い出したり。
府中の駅前の眼鏡屋さん。いまは駅前開発の真っ最中で、ガード下の別な仮設店舗で営業中。何分かおきに頭上を行き交う電車のせいでゴトンゴトンと少し揺れてる。「地震じゃないか、ってビックリするお客様もいらっしゃいますが、私はすっかり慣れました」と、そのセールス氏。
いまのメガネを作ったのが3年前。すこし度が変わってきてる? 最近、眼精疲労が強くなった気もするし。ということでそのメガネ屋さんへ。
でもお店で実際に検査してみると、その3年前と視力は大して変わらず。「強いて言えば、右目の近視が強くなった程度でしょうか」と。
で、冒頭の結論になったわけ。
「無理にお客様におすすめすることはありません」
つまり、客に本当に価値のある商品やサービスを届ける、ということなんだろうな。
結局、洗浄やネジの増し締めなど、メンテナンスをしてもらって店を後に。
あのあと、2日経ったけど眼精疲労は減ってる。別に作り直さなくても、メンテナンスだけで良かったわけで。
これが、プロのサービスなのかな、とちょっと感心したり。
「でも、来年になったら、視力が変わってるかもしれませんので、またおいでください」と、そのセールス氏は言ってました。
素直に行こう、と思えちゃいますね。こんなサービスを受けたら。
駅前の開発はあと3年はかかるのだそう。
なので、来年もあのゴトンゴトンの仮店舗に行くんだな。と、駅通路から見える開発の光景を見ながら思ったのでした。

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