ニーズは客の心にある?

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「お産トラウマ」があるんだそうです。

お産のとき、産婦人科医から十分な説明を受けなかった、帝王切開などでの傷の痛みがひどかった、また帝王切開で産んだことを周囲から否定的に言われた、など。辛い記憶がそのまま消えず、ひいてはそれが育児にも悪影響をおよぼしている、というのです。

仕事で町のクリニックの先生にインタビューすることがよくあるのですが、臨床の現場は多忙です。忙しすぎます。医師は患者に5分しか接していられない、とよく言われます。厚生労働省が設計する制度に則って利潤を出し、看護師などスタッフの雇用を継続し、医療サービスを提供し続けるために逆算すると、その程度の時間しか対応できないそうです。流れ作業で診療を「大量生産」しないと、事業継続もままならない、というわけです。

産婦人科も例に漏れないと思います。しかも診療の特性上、いつお産が始まるか分かりませんし、始まったとしても分娩時間の見当もつきません。「大量生産」には向かないわけです。

出産って、当事者にとっては人生の一大イベントです。でもお医者さんにとっては、数ある患者さんのうちの一人でしかありません。

しかも最近の人は、小さいうちから大切に育てられています。幼稚園や保育園の学芸会などでも「あなたが主役」と扱われ、大きくなっても商店や各種サービス会社からも、「お客様」として対応されます。

それが、一大イベントのひとつである出産に限って、なんだかぞんざいに扱われてしまう。しかも初体験だし、痛いし、いろんな状況でクレームを付けている間もない。医者と患者、両者のそんなギャップもトラウマを生む原因になっているように思います。

ただ、「満足いく出産をしたい」というニーズがあるなら、そのためのサービス提供を考えればいいのでは、とも思ったのでした。苦労してわが子を産んだばかりの新米ママさんを癒し、励ますようなサービス。そのためのコストを料金に上乗せすることで、クリニック経営の「足し」にできそうな気もします。法制上の制約はいろいろありそうですが。

昔から継続してきた事業も、時代の変化とともにニーズが変わっています。自分の事業の言い訳ばかり考えてないで、客のニーズを探してみる。そのことで儲かりにくくなった事業でも、それを改善するための策はありそうだよね。などと自戒も込めて思ったのでした。

※画像はhttp://www1.nhk.or.jp/asaichi/より

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